恋愛・不倫コラム①:咲いた日は春 『咲くときが来たなら咲かざるを得ないよな』




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つい先日のことです。

私は同じ職場の4つ年上のアラフォー女性と二人で飲みに行きました。
彼女とは以前、職場全体での飲み会で席が近かったこともあり、恋愛相談を持ちかけられたのです。
彼女は既婚者ですが、相談というのは夫についてではなく「彼氏」との関係についてです。

 

 

以前の飲み会のときはお互い(特に私が)酔っていたので、改まって二人で飲みに行くと、
最初はなんだかややぎこちない感じでした。
よく考えると彼女(以下Mさん)とは同じ職場とは言うものの、携わっている仕事がやや異なり、
普段は言葉を交わすことも少なかったのです。

 

Mさんは特に美人というタイプではなく、Mさんの旦那さんいわく「相席スタートの山崎ケイ」的な魅力のある女性とのこと。
私としても確かに旦那さんの言い分にはうなづけるものがあります。
かといって私には下心はこれっぽっちしかありませんでした。

 

 

飲み進めるにしたがい、次第に打ち解けたムードになると、話はディープに、そして「彼氏」の存在に迫っていきました。
話はまずMさんのこれまでの恋愛遍歴から始まります。
Mさんは大阪のディープな街の出身で、大阪のディープな街出身者特有の底抜けに冷めたところを持っています。
「冷めた」っていうのは、現実だけを見つめつくして、決して夢を見ないって感じです。
Mさん自身も「私は心がないと言われるし、自分でもそう思う」という表現でそれを認めていました。

 

 

Mさんに転機があったのは、高校2年生のときです。彼女には同級生に好きな男子がいて、
何とか口説き落として体の関係を持つようになりました。大好きな人なのに、彼氏・彼女の関係になるのではなく、
「体の関係」になるのが冷めた彼女らしいところです。
その男性を、Mさんの親友と会わせたところ、男性はMさんの親友に一目惚れ。男性はMさんに親友を紹介するようお願いし、
結局、親友とその男性は付き合い、後に結婚することになりました。
ちなみに親友はMさんと男性が肉体関係を持っていたことを知りません。
とにかく、この出来事はMさんの心に深い傷となって残りました。
どれくらい深いかと言うと、後にMさんに別の彼氏ができ、その彼が自殺したときも、この高校時代の出来事程の衝撃は
まったく受けなかったという程です。

その彼が自殺したのはMさんに捨てられたことが原因で、捨てた理由は当時二股交際していた今の旦那さんとの結婚を
選択したからでした。

 

 

Mさんはその高校時代の出来事以来、常に複数の男性と肉体関係を持ち続けていました。
そしてそれは結婚後も続きました。ただ、Mさんいわく「セフレ」は一人もおらず、友達としての付き合いの
延長線上に「そういう行為」も含まれているだけで、友達なので恋愛感情が生まれることもなかったとの事でした。
Mさんが言うには、旦那さんは、Mさんのそういう行動に全く気づいておらず、何より驚くのは結婚して約15年
経った現在でも、いまだにMさんを女性として大好きであるということです。
Mさんは、これまで旦那さんに「そういう行動」が気づかれなかったのは、肉体関係を持った男性に対して恋愛感情を全く持たなかったためだと言います。
ただ、「彼氏」との関係はちょっと違います。

 

 

酔いが回ってきたのかMさんは臆面もなく言い始めます。
「彼のことが好きでしょうがないんだよね。LINEの返事が遅かったりすると、もう私のこと飽きたんでしょ!?ヴ~(ρ_;)って泣きたくなっちゃう」
ちなみにMさんは大阪のディープな街出身なのに、標準語を使います。大阪弁が嫌いなんです。
「彼氏」と知り合ったのは約10年前で、長らく「肉体関係のある友達」の中の一人でした。
彼は「肉体関係のある友達」の中の一人から、「好きでしょうがない人」に昇格したわけで、「昇格」してもう2年くらい経つらしいです。
彼は音楽関係の職についており、苦節約10年、ようやく音楽でご飯が食べられるようになってきた人です。
私が見るところ、昇格理由は彼が「夢を叶えた男」って事が大きいと思いますが、私がMさんに「そういうことかな?」って聞くと、
彼女は「どうなんだろう?よく分からない」とちょっと遠くを見て言います。
まぁ「よく分からない」って事にしとくほうが何となく神秘的な感じがするし、Mさんにとってはそれが実感なのかも知れません。

Mさんはもっと私に酔っ払って欲しいらしく、追加のお酒を頼むように促します。
私は残ったお酒を飲み干すと、店員を呼んで、追加のハイボールを頼みました。

 

 

私の1.5倍のペースで飲み続けながら、Mさんの話は続いて、彼にはミュージシャンの奥さんがいる事、
彼は「自分が結婚したのは、Mさんが結婚していたからだ」と言っているということ、彼は東京、Mさんは関西に住んでいるので、
Mさんが東京に出張したときや彼がイベントで関西に来たとき等に会っていることを私は知りました。

 

11時を過ぎると「彼も私と同じ気持ちでいてくれている」と言ったのろけ話が続き、前日も飲みに行っていた私はこのあたりから眠くなってきました。
めんどくさくなってきて時計もチラチラ見始めました。
あくびをかみ殺し、いい加減な相槌を返しながら、私がぼんやりと考えていたのは、「咲くときが来たなら咲かざるを得ないよな」って事です。季節違いの狂い咲きでも、すぐにまた冬が戻ってきて萎れてしまうかも知れなくても、多分咲いたほうがいいです。咲いた事実は多分小さなことではないですから。

 

 

Mさんは今日も、彼のことを思って胸を痛めたり、少しでも声が聞きたくて電話をかけたり、連絡がないと怒ったり、泣いたり、彼の子どもが欲しいと思ったり、多分10代にしておくべきだったようなハイボルテージな毎日を過ごしています。

帰り道、わたしは自転車をふらふらと漕ぎながら、生ぬるい風に揺れる道端の花をぼんやりと見ていました。
3年ぶりに職務質問された夜でした。

 




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