僕の好きな人はレズビアン~諦めること⑤~




 

●一ノ瀬の沖縄旅行

一ノ瀬は夜一人で那覇市にあるとあるビアンバーに出かけた。国際通りの近くのホテルに泊まっていたので歩いて行けたらしい。

長年付き合ったビアンカップルが2人でお店を切り盛りしていて、カウンターに座ってゆっくりと喋れる雰囲気だったそうだ。カップルもいたし1人で遊びに来ていた人もいて一ノ瀬は隣に座っていた30代の女性と仲良くなったらしい。

仲良くなった・・・
ただLINE交換をしたらしい。

2泊3日の旅行は、1日目はピンクドットがメイン、2日目は首里城や南部の沖縄ワールドに行って普通に観光した。
1日目の夜にビアンバーに行った一ノ瀬は、2日目はおとなしく僕に付き合ってくれた。

 

●試してみたい

 

沖縄料理よりステーキをガッつこうと夜の国際通りに繰り出した。僕たちは、ステーキを食べたあとさらに焼き鳥屋に入った。オリオンビールも進んで2人とも結構酔っていたんだよな。一ノ瀬は先にホテルに戻った。

国際通りからちょっとそれるとゲイバーが何軒かある。桜坂という情緒あふれる歓楽街があることは僕もリサーチ済みだった。行きたかったし、少し肌さみしい感じもあった。

行った。

お店は入りずらくドアが重く感じた。

1人でアウェーにならないか不安だったけど勢いはあった。

中年の男性がカウンターに案内してくれた。
同じ年くらいの若い男性スタッフもいた。

観光客はすぐにわかるらしく、
色々話を振ってもらった。
初めての空間にテンションも上がっていた。

いろんなタイプの人がいたけれど、
僕はジャニーズっぽい男の子にどうやら気に入られた。
高校時代野球部だった彼の初めての彼氏は、同じ野球部のメンバーだった。

告白したら、
「俺も好きだった」
相手にそう言われて付き合い始めたらしい。

すごいうらやましい気持ちになった。
なんだか・・・そんな気持ちになった。

好奇心と酔いの勢いで
僕は、彼と店をあとにした。

 

●波の上のビーチに移動

 

タクシーで数分の場所にビーチがあった。
そしてラブホ街もあった。
僕たちは波の上に移動した。

ビーチがそばにあれば、
露骨にホテルに直行しなくて済む。
申し訳程度にぶらついて行くことにはかわりないけれど。少し雰囲気を楽しんだ。

沖縄はいろんな体験をするのに向いていると思う。
あまりにも開放的な気分になって、
あまりにも大胆になる!

僕は男性とすることになんの違和感もなかった。
どうしたらいいのかわからず任せていたけれど、
ただ気持ち良いことを一緒に楽しんだ。

 

●普通に諦めること

 

僕は昨日の出来事を一ノ瀬に話した。
普通こんなこと話すか?!

一ノ瀬も僕も性に対してオープンになっていた。
いや、話す相手がお互いしかいないからそうなった。

一ノ瀬は楽しそうに話を聞いた。
「うらやましい~」と涼しく笑っていた。

その顔を見て「あ」と思ったけれど、
僕は前より穏やかな心で受け止めた。

諦める・・・

失恋の当たり前の感情が静かに訪れた。

性別で恋愛対象から外れる、このどうしようもなさに苦しんでると思っていたけど、好きになった人と付き合えないなんてよくあることだ。

相手がレズビアンだから、自分が性別行方不明者だからって余計に苦しんでいるように思っていたけれど、ごくありふれた失恋だったんだな。ゲイとの夜が僕を変えた?・・・否定はできない。ただ気づいたのは、僕は性別に執着することで一ノ瀬に執着してた。「どうして性で恋愛を線引きするのか?」怒っていたのかもしれない。

 

相手の恋愛対象に自分が入りかつ、自分の恋愛対象に相手が入る、その重なったところでしか恋は生まれないという事実は誰しも同じ。性別で恋愛対象かどうか大きく選別されても誰に文句が言えるんだ・・・。

 

どうであれ一ノ瀬とは重ならなかった。

僕はやっと普通に諦める準備ができた。

 

いつか一之瀬とベッドで何をしたか書きたい。もちろん一ノ瀬は仮名だし、いいだろう。

つづく




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