僕の好きな人はレズビアン~僕が彼女と友達になるまでの記録②~




 

振られた僕は、失恋の傷と同時に、毎日何かの後遺症のように体のどこかが傷んでいた。かわるがわる場所を変えながら僕を最後まで侵食していくような疼き方だった。

 

●一ノ瀬は男になりたいのか?

「あ~女になりたい」

ヤケになっているのか?
でも、僕が男である必要はあるのか?とやっぱり変に思われるかもしれないけど考えてしまう。
鏡を見ては、「女になれそうな顔じゃないか?」と本気で考えてしまうんだ。

一ノ瀬(呼び捨て)は、異性が好きな人(男が恋愛対象)を好きになった場合、どんな気持ちになるんだろうか?

僕はその点における一ノ瀬の心が知りたくなった。
松川(呼び捨て)に振られて「男に産まれたかった」なんて思わなかったのだろうか?いや今までも同性を好きになって相手が異性愛者ならそう思うこともあったんじゃないか・・・。

あの日ホテルに行っても行かなかったとしても僕は一ノ瀬が大好きだったと思う。なれるなら仲の良い同期であり友達になりたい。

 

●僕は一ノ瀬に聞いてみた

上に書いたようなことを。

彼女はこう答えた。
「男に産まれたかった、男になりたいとは一度も思ったことないかもなあ~不思議だよね~」

「女になりたい」
このやり場のない想い、ただ事ではないこの感情、僕は一ノ瀬と共有したかったのにまったく期待してない返答だった。

僕はおかしくなってしまったのかもしれない。

 

そして正直に僕の気持ちも言ってみた。

「最初から恋愛対象外だったって辛いんだよ。自分は一ノ瀬がレズビアンだと知って女になりたいって頭をかすめるようになったんだけど」

一ノ瀬は驚いていた。でもにこやかでつくづく綺麗だなと辛くなった。

「へ~そんな風に思うんだ!面白い!私は竹富くんの色が白くて横顔の綺麗な端正な顔は好みなんだけど・・・でも不思議だよね、性別って。何も感じないわけじゃないんだけど、女の子とじゃなきゃ心が満たされない・・・傷つけた上にこんなに混乱させてしまって、本当に悪いことしてしまって・・・」

僕は、褒められてまた後遺症が増えていくようだった。

 

●一之瀬と仲良くなる

一ノ瀬だって、松川に遊ばれたようなものだ。松川はまじめに見えるけれど淫乱だ。

一ノ瀬は自分がレズビアンであることを同性には隠してなかった。松川は一度綺麗な子と付き合ってみたかった・寝てみたかった、その程度の軽い気持ちでつけ込んだんだろう。

松川より一ノ瀬の方がずっと綺麗だ、魅力的だ。

なのに一ノ瀬が振られてしまうなんて。おそらくほとんどの人間が一ノ瀬の方が綺麗だと思うだろう!そう思ってしまうほどに僕はまだまだ一ノ瀬が好きでたまらなかった。

だからちょっとだけ気の合う友達として仲良くしていた。気持ちとしては一ノ瀬の男友達ではなく・・・。

 

●性別って何だろう?

 

僕が自分のことを女だって言い張っても、性器の形で男だと言われる。間違いなく僕は女風呂には入れないわけで。

この国の法律では戸籍の性別を変えるには性器の手術をしなければならないらしい。

そこまで想像して「やっぱり無理だ」と思った。女にはなれない。怖すぎる。

僕は、確かに一之瀬と寝たい。

ただ男として一之瀬とどうにかなりたいのか?そんな気持ちがわからなくなっていた。

「男として」とはどういうことか?

正直男性としての体の構造で僕は一ノ瀬を欲しているわけじゃない気がしていた。

そんな馬鹿な、何言ってんの?そんな声が今にも聞こえてきそうだ。

「てかおい!聞こえてるぞ!」

 

●好きってなんだろう?

僕のこの感覚は相当不思議なものなんだろうし、「男らしくない」「変な奴」だと言われそうだ。

でも僕は変わってしまった。一之瀬との出会いで僕の中で何かが変わってしまった。

好きってなんだろう?今まで僕はどうやって恋愛をしてきたのだろうか?そういえば今まで一度も自分から告白したことはなかったな。

もちろん相手のことを好きになったし、健全と言わるほどには性欲だってあった。

今でもある。

ただそれが男としてのものだと言われると違うような気もする。

女になりたいってくどくどうるさい奴だなって、そろそろ思われるだろう。

とりあえず一言、言っておこう

僕は、性別のない世界に行きたい。

女になりたいというよりも。

つづく。




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